三浦工匠店 新数奇屋造り100年住宅

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古民家はどう、造られてきたのか
 
  この辺の古民家は、どのような経路で造られてきたのかについて、考えてみましょう。この辺りは養蚕農家という形態が色濃く残っていることからも地域産業による形態が出来上がってきたと考えられます。 いつからか養蚕の衰退と共に家づくりも変わり、農家形住宅は昭和初期以後、ほとんど造られなくなりました。当時の農家造りは生産の場で寝起きして働けたのは大変都合が良かったと言えます。住まいとしてみると当然、不都合な所がたくさんあったのですが、住みながら収入を得るというのは当たり前のことであり、日常の不便さはあまり気にしなかったようです。
 また、当時の大工も素晴らしかったと思います。構造計算もなく、勘と経験のみで作り上げたその建物が、100年から300年もの間、地震や台風に耐え忍んできたのですから素晴らしいことです。(写真=古民家の再生について説明しました)
 (佐藤家内部を見渡し)ご覧の通り、耐震壁は北面にいくつかある程度でほとんど見あたりません。建具を外せば、ほとんど吹き抜け状態になってしまうのに、どうやって地震に堪えてきたのでしょうか。その秘密は、太い大引、太い大黒柱、太い差し鴨居、通し梁、上屋梁、通し貫に厚壁塗りにあるのです。また、継ぎ手や仕口がうまく、長物材を使い継ぎ手をあまり使わないで、太い通し柄、差し鴨居を柱で継ぐ、シャチ継ぎ、込み栓や大栓で大梁を絞めています。さらに地震の時はゆらゆらと揺れますが、倒れない構造はどこかで免震になっているのです。通し貫にして厚い土壁塗りをすれば倒れないんだということを先人の大工達はそれをよく知っていたと思います。

 また、この建物を建てる時が、興味深いのであります。大梁を架けるとき15~20センチ位盛らせておいて、ロープで絞めながら大栓をカケヤで締め付けてしまいます。こうすることで家全体を固めてしまいます。それから、古民家はほとんど色付けをしていました。白木造りより長持ちするのと汚れが付かない、磨き上げれば素晴らしい色艶となります。昔は、“カイコ様”の煮だし汁で帯戸、大黒柱や床材をお嫁さんが一生懸命磨き上げてきたのでした。帯戸などは鏡のように光っていたのを覚えております。今、当時の色付けがどこへ行っても出来なくなってしまったのです。使用した材料は、顔料、松煙、茶コ、アセン薬、煮皮などとなっていますが、調合が分かりません。化学塗料が出来たため私も文化財の色づけで大変苦労をしております。ほかに“三和土”(土間のタタキ仕上げ)という工法も忘れられた工法の一つです。本当のタタキ仕上げはコンクリート仕上げよりも優れており、何百年も長持ちしています。やり方は粘土に砂利、砂を加え、石灰と岩塩を入れて混ぜますが水は加えません。その土を約30センチの厚さにして、細い棒で丹念に突き固めるという作業なのですが、これも本当の調合が分からず、文化財の三和仕上げでも凍み崩れを起こしている所もありました。こうしてみると、古民家といわれる建物は、今では誰でも建てられる技術ではなくなりました。何百年も伝統工法である色付け、タタキ仕上げ等の多くの工法がわずか数十年で、昔からの本物が出来なくなってきたことを考えると、古民家とは何と価値のある建物であるかが分かります。

 ですから、私たちは、できるだけ住みながら残せる古民家再生を心がけています。長年暮らしてきた家には必ず改造が施してあり、こうしたことにより家が壊れてきています。水回りを家の中に取り込んだことが、いちばんの原因と考えています。そして、家が腐りやすくなったのです。冬の寒さ対策にサッシを取り付けたこと、屋根を取り替えたこと等により、家のバランスがとても悪くなっています。今まで住んでこられた人の本当の悩みは、何といっても冬の寒さ対策です。夏は涼しいわけですから、冬を暖かく住まえることを考えて、元の姿に戻して復元すれば、いちばん美しく最高の住まいとなるわけです。堂々とした構え、長い歴史を刻んできた風格のある建物の中に身を置き、時の流れを少しゆるめて、花鳥風月を楽しみながら生活が出来ることは最高の幸せではないかと思います。
 今、古民家は住みにくいと言われ、次々と取り壊されていきます。何百年も続く先人達の素晴らしい技術や文化を捨てて、長持ちしない、格好だけの安い住まいは、かえって高価でゴミを大量に生産しているに過ぎないと私は感じています。古民家という建物は、大修理をすれば、また100年位住み続けられることが出来るのです。ですから、皆さん、若い人達の考えや知恵を貸していただき、私たちと一緒に古民家再生や文化財の修理保存といったものに一緒に取り組んで頂きたいと考えています。(平成20年2月15日、社団法人福島県建築士事務所協会県北支部青年部による古民家体験勉強会「伝統建築物について」と題した講演から)
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