三浦工匠店 新数奇屋造り100年住宅

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欅は、切り倒して使えるまで10年
 
 まず、地元の木を見てみますと、杉や松の木は樹齢40年~100年生位の木を使っています。檜材はほとんどなく、ヒバやアスナロが多かったようです。欅もありますが、ほとんどは槻の木のようです。栗の木は太くなると鉄砲虫が入り、見え掛かりにはあまり使えません。
   福島地方の昭和初期までは、自宅のイグネか近場の山から切り出して家を建てました。その頃までの家の建て替えサイクルは70年~80年位でしたので、良い木の育林もできていたと思われます。何と言っても地元の木で家を建てることは、そこの気候風土に合っている訳で色艶も良く、長持ちするということです。遠い所から持ってきた材は、ここの風土には合わずボケてしまい艶がでません。私も何度か失敗しております。

 ここで私の大好きな欅の木を取りあげてみましょう。良い木を見分けるコツとしてまず、立ち木の場合は真っすぐで枝下の長い本欅であること。これは木膚や枝を見ると分かります。目通りで70㎝以上あるもので樹齢100年以上たっているもの。また、夏の暑い時分、水揚げの音が聞こえるものとで分けています。(写真=若い設計士の皆さんには真剣に聴いて頂きました)

 また、欅材と一口に言いますが、欅ほど呼び名が多いものはないか思います。特上物でいちばん値が張る玉杢欅、次いで紫欅、赤欅、御所欅と呼ばれる物から、青欅、犬欅、そしてどうしようもないのが、重くカンナ切れの悪い石欅です。本欅やぬか目に変わった材は薄物の板材に用い、その他は大黒柱や差し鴨居、框(かまち)といった太物として使っています。欅材を使う際に注意しなければならないのは、欅はなかなか乾燥しませんので、未乾燥のまま使うと狂いや幅詰まりが起こってしまいます。私も失敗した例があります。お客様の欅だったのですが、切って1年くらいで使いたいという注文でしたので、最初から薄物に挽き、燻煙乾燥を施した材、厚さ4㎝×幅80㎝ 長さ1.4mのもの約10枚を広縁の床材に使用しました。裏に引ドッコを付けて、逃げも取っておいたのですが、間に合いませんでした。一枚に付、15㎜も詰まってしまい後で、埋め木をするハメになってしまいました。不完全な乾燥は家を狂わせてしまいます。そうした経験から、私は立木から切り倒して使えるまで10年と見ています。寒切りしてから一年は雨晒しにして、白太を腐らせます。白太に入っている虫の玉子を死なすことと、白太の引きの強さを殺すことをします。それから大割にして、7~8年陰干しにして積んでおきます。その後、使う材料に挽き直して、一年くらい狂わせておいてから使います。欅材を使うにはそれなりの年月がいるわけですが、使ってからの仕上げは、漆仕上げがいちばん良いと思います。年数が経つほど素晴らしい虎斑杢(とらふもく)が出てきます。欅は硬くて使いにくい木ですが、私はいちばん好んで使っています。

  今度は、適材適所として使われる古民家材についてお話ししましょう。まず、土台や大引、根太等に使われる材はほとんどが栗材です。大黒柱は堅さや美しさのある欅材が主で、栗材も使われています。柱となると北側や湿っている所には栗材、その他は杉材が多いようです。差し鴨居、ツリと呼ばれるものは、良いところでは欅材、一般には松ですが杉材もまれにあります。大梁、上屋梁、桁、サス等は松材が一般的に使われています。この辺の農家には桧材はほとんど使われていません。これは最近まで火柱と呼んで嫌っておりました。次に、木の切り時期についてですが、木は寒中に切ることが習わしになっています。それは12月から2月頃までに切るのがいちばん良いとされています。この時期に切った木は乾燥が早く、建ててからも色艶も良く長持ちがするからです。水あげしてから切った木は虫が入っていて、色艶も悪く強度も上がりません。ですから、家全体が長持ちしないと言うわけです。今は年中切っていますから、一度確かめて見ることが必要です。(写真=当社が施工した宮城県名取市にある安政6年、築140年のT邸です)

 さらに、家を建てては行けない場所や、やってはいけない事を私が教わった範囲でお話しします。

  1) 坂上、坂下、宮前、樋口といったこうした所には“家を建てるな”との言い伝えがあります。坂上、坂下という場所は大地震の時、地滑りが起きやすく中越地震で身を持って現地で実感してきました。宮前は縁起が良すぎて良くない。樋口や水口などという所は大雨の時、家が流されてしまうといいます。
  2) 建舞の時、逆さ柱に建ててはいけない。これはものすごく、忌み嫌います。
  3) 梁や桁を使う時、背と腹を間違わない。普通は背を上にして使うのが習わしで雪国では、腹を上にして使います。
  4) 梁や桁の下バには絶対キズを加えないこと。これは引張りの方に力が加わった時、折れてしまう危険性があります。
  5) 木表、木裏を間違わない。 これは、木表は色艶が出るが木裏は艶が出ない。
  6) 文化財の修理や古民家等で、埋め木又は根継ぎ等をする場合、新材は木痩せするので、元の材より、5~6㎜程度大きくしておく。平らに埋めてしまうと激痩せして、取り返しがつかなくなる。
  7) 丸太、桁を使う場合の向きは、これは人の進む方向へ流す。日の出ずるより沈む方向が良い。
  8) 天井の杢目の流し方。同上です。
  9) 家相を良く見てあげる。運気の上がるような家相にしてあげる。大庄屋様ほど家相を良くして貰っていたと聞きます。家相図等も残っています。
  10) 社寺建築を造ろうとする時は、四神相応の地を選ぶこと。北の玄武、東の青竜、南の朱雀、西の白虎といった地を選ぶことによって、長く繁栄していくのだそうです。その地形とは、北に雪を抱く高い山あり、東に清い川の流れあり、南は広く開かれた地あり、西に長い道が通っている所とされています。このことは、中国の風水から来ているといわれています。

 さらに、一般の農家造りと庄屋造りについて、私なりに見たことを話しますと、一般の農家は材が細かく、キャシャな造りであったためか、20年に一度の割りで屋根の葺き替え、さらに茅の入手が困難になるなどで、次々と壊されてきました。一方、庄屋様と言われる家は、構えが大きく太い材料を使い、吟味した造りであったため、一般の農家住宅より何倍も長持ちしています。
 この佐藤家も庄屋様と呼ばれ、母屋を中心に米蔵、味噌蔵、農具蔵、タンス蔵と回りを取り囲んだ造りとなっています。こうした屋敷を造って維持できたのも農地を小作させていた時代まででした。農地解放以来、大庄屋様ほど収入が無くなり、維持が困難になってきたのです。しかし、この佐藤家は特別でした。今まで住みながらキッチリと手を加え、気持ちよく住んでおられます。今後もこのような立派な文化財とでも言うべき建物を壊されることなく維持して、生活されていただきたいと願っています。
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